【歯科医師執筆】60代の入れ歯使用割合は?ブリッジやインプラントとの比較

遠藤眞次
この記事の執筆者
歯科医師兼歯科専門ライター。東京都池袋の「グランドメゾンデンタルクリニック」で診療しています。

60代における歯の喪失数は増加傾向にあり、それに伴い義歯やブリッジ、インプラントなどの欠損補綴治療を受ける方も増えています。

特に義歯は多くの人々に広く利用されている方法ですが、その背景には多様な利点や使用状況があります。しかし、義歯だけが唯一の選択肢ではありません。他の方法としてブリッジやインプラントもありますが、それらの使用割合や選択基準、費用対効果についてもしっかりと理解しておくことが大切です。

本記事では、60代における各治療法の使用状況やメリット・デメリットを詳しく探り、それぞれの治療法をどのように選ぶべきか、またその際に考慮すべきポイントについても考察します。

歯科医師からのアドバイスや実際の生存率に基づいた情報を元に、あなたに最適な選択をするための手助けを提供します。この続きで、60代の方がどのように欠損補綴治療を選択すべきか見ていきましょう。

目次

60代で歯を失った場合の治療法とは?

60代になると喪失歯数が増え、欠損補綴治療が必要になることがあります。歯を失った場合には、入れ歯、ブリッジ、インプラントが一般的な選択肢です。

それぞれの治療法には異なる特徴があり、患者の口腔内の状態や経済状況などを総合的に判断して選ばれます。最適な治療法を決めるには、専門の歯科医師との綿密な相談が欠かせません。

60代の喪失歯数

60代では、約3〜6本の歯を喪失しています。特に60代前半と後半では、平均の欠損歯数が2倍も異なります。

60代の1人平均喪失歯数
55〜64歳

3.0歯

65〜74歳

6.0歯

喪失歯数が増えると、それに応じた適切な補綴治療が必要とされます。歯の健康は全身の健康にも影響を及ぼすため、早期の対処が重要です。

欠損補綴治療について

欠損補綴治療には、入れ歯、ブリッジ、インプラントなどの方法があります。入れ歯は取り外し可能で、比較的低コストで提供される一方、しっかりとした固定感が得られにくいこともあります。

ブリッジは、両隣の歯を支えとして固定するため、安定感がありますが、自然歯を削る必要がある場合があります。

インプラントは、人工歯根を顎に埋め込み、天然歯に近い感覚を提供しますが、手術が必要で費用も高額になることがあります。

それぞれの治療法にはメリットとデメリットが存在し、患者の状態や希望により選択されます。

60代と入れ歯の関係

60代での入れ歯使用は一般的で、歯の喪失に伴って健康を維持する一つの方法として多くの方に採用されています。

入れ歯は、失った歯を補うための義歯として、多くの60代の方々に利用されていますが、その関係性は個々の生活スタイルや健康状態によるところが大きいです。また、最近では技術の進化により、より快適で機能的な入れ歯が登場しています。

60代の入れ歯使用割合

60代の人々の約20%が部分的または総入れ歯を使用していると報告されています。

60代で入れ歯を装着している人の割合
60〜64歳

部分入れ歯:15.3% 総入れ歯:2.8%

65〜69歳

部分入れ歯:19.1% 総入れ歯:3.2%

注目すべき点は50代の入れ歯装着者割合と比較して、部分入れ歯では約2倍、総入れ歯では約4倍に増加していることです。特に総入れ歯の装着者割合は、40代以降横ばいだったものの、60代に入ってから急増しています。

60代における入れ歯のメリットとデメリット

入れ歯の最大のメリットは、その費用と製作の迅速さです。部分入れ歯も総入れ歯も、比較的低コストで製作でき、多くの人に利用されています。また、1歯欠損から14歯欠損まで対応が可能ですので、ブリッジのような制限がありません。

一方、デメリットとしては、装着感に慣れるまで時間がかかることや、定期的な調整が必要である点が挙げられます。さらに、長期間使用するうちに顎の骨が痩せ、入れ歯が合わなくなることもあります。

それでも、多くの60代の方が義歯としての入れ歯を使い続ける理由は、その利便性と即効性にあります。

60代における入れ歯以外の欠損補綴治療の割合

60代において、入れ歯以外の欠損補綴治療の割合も増加傾向にあります。特にブリッジやインプラントなどは、より自然で快適な使用感を求める人々に選ばれています。

技術の進化と共に、多様な治療法が提供されるようになり、それぞれに応じた選択肢が広がっています。それぞれの治療法は、患者のライフスタイルや身体状況に応じて適した選択が重要です。

年代別の入れ歯装着割合は下記の記事で比較しています。

60代のブリッジ使用割合

60代のブリッジ使用割合は約40%です。

60代でブリッジを装着している人の割合
60〜64歳

40.1%

65〜69歳

41.4%

ブリッジは、喪失した歯の両隣の健康な歯に人工の歯を固定する方法で、多くの60代が選択する理由の一つは、その固定感と噛む力をしっかりと維持できる点です。さらに60代の欠損歯数は平均して3〜6歯程度であることから、ブリッジで治療できる程度の欠損歯数であることも要因でしょう。

60代のインプラント使用割合

インプラントは近年注目されている治療法であり、60代の使用率は4%前後です。50代から微増しています。

60代でインプラントを装着している人の割合
60〜64歳

4.5%

65〜69歳

3.6%

インプラントは、人工の歯根を顎骨に埋め込むことにより、自然の歯に近い感覚を取り戻すことが可能です。長期的な安定性が高く、周囲の歯に負担をかけないのが大きな利点です。しかし、手術が必要となり、費用も高額であることから、選択には慎重さが求められます。他の補綴治療と比べ、インプラントは生活の質を向上させるための有力な選択肢とされています。

60代が欠損補綴治療を選ぶ際の基準

60代の方が欠損補綴治療を選ぶ際の基準として、生存率、費用対効果、そして歯科医師からのアドバイスが大きな指標となります。

治療法の選択にはコストや身体への負担、長期的なメンテナンスの容易さなどを総合的に考慮する必要があります。これにより、個々人のニーズに最適な補綴方法を選ぶことができ、結果的に日常生活の質を向上させることに寄与します。

生存率

治療法の生存率は、選択基準の中で非常に重要な要素の一つです。インプラントは高い生存率で知られ、10年以上の使用に対する安定した信頼性があります。入れ歯の場合、メンテナンスや調整を怠らなければ、長期間の使用が可能です。一方、ブリッジは適切なケアを行うことで10年以上の寿命を持ちますが、支持歯の健康状態に左右されます。生存率を考慮することは、治療の長期的な効果を確保するために欠かせない要素です。

費用対効果

費用対効果は、多くの患者が考慮する重要な点です。入れ歯は比較的安価で、特に保険適用が可能なため経済的ですが、頻繁な調整が必要です。インプラントは初期費用が高いものの、長期的な使用を考慮すると結果的に費用対効果が高いとされます。ブリッジは中程度の費用であり、見た目と機能のバランスが取れた治療法と言えるでしょう。治療法選択の際には、初期費用だけでなく、長期的なコストと効果を総合的に判断することが求められます。

歯科医師からのアドバイス

60代においては、目先の楽さにとらわれず、長持ちする治療法を選択することが重要でしょう。年齢を重ねるにつれて、全身的にも、口腔内にも問題が生じてきます。

仕事も落ち着き、歯科治療にあてる時間もできてくる場合も多いですので、これを機に徹底した歯科治療を受けることをおすすめします。

まとめ

60代における歯の喪失は一般的な現象であり、これに対する治療法としてさまざまな選択肢があります。一般的には義歯、ブリッジ、インプラントが主な補綴治療法として挙げられます。義歯は取り外し可能であるため、メンテナンスがしやすい点が魅力です。一方で、使用に慣れるまでに時間がかかる場合があります。ブリッジは周囲の健康な歯を削って固定する方法で、安定感があるものの、長期的に見ると支える歯に負担がかかることが課題です。インプラントは顎の骨に直接取り付けることで自然な感触を提供し、耐久性も高いものの、初期費用が高く手術を伴います。60代が補綴治療を選ぶ際には、生存率や費用対効果、歯科医師からのアドバイスが重要な要素となります。それぞれの治療法にはメリットとデメリットがあるため、自身のライフスタイルや健康状態に最適な選択をすることが求められます。

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