入れ歯を清潔に保つためには、正しい洗い方と適切な洗浄が不可欠です。
この記事では、歯科医師が考える入れ歯の基本的な洗浄方法から自宅での具体的なケア、そして歯科医院クリーニングについて詳しく紹介します。機械的洗浄と化学的洗浄、そして使用すべき洗浄道具の違いや選び方についても解説します。
入れ歯の洗い方の基本
入れ歯を清潔に保つためには、日常的な洗浄が必要です。入れ歯の洗い方には、主に機械的洗浄と化学的洗浄の2つの方法があります。
ここでは、義歯洗浄の種類と洗浄道具について詳しく確認します。
機械的洗浄
機械的洗浄とは、義歯用ブラシや超音波洗浄機を使って、入れ歯を物理的に洗浄する方法です。
天然歯における歯みがきと同じで、入れ歯の洗い方の基本となります。食べかすやデンチャープラークを機械的に除去することで、化学的洗浄の効果が十分に発揮できる環境を整えます。
義歯表面に付着するプラークのこと。プラークとは細菌のかたまりであり、入れ歯表面のぬめりにつながります。
入れ歯の細かい部分までは、義歯用ブラシが届かないというデメリットがあります。
化学的洗浄
化学的洗浄は、専用の洗浄剤を用いて入れ歯を洗浄する方法です。
機械的洗浄だけでは落としきれない、入れ歯の細かな部分や、入れ歯表面の細菌を除去する作用があります。
化学的洗浄剤には以下の4つのタイプが存在します。
- 錠剤タイプ
- 粉末タイプ
- 液体タイプ
- 泡タイプ
① 錠剤タイプと② 粉末タイプは水に溶かして使用します。③ 液体タイプは原液または希釈して使用します。④ 泡タイプでは、入れ歯表面に直接塗布して使用します。
化学的洗浄剤が十分な効果を発揮するためには、取扱説明書に従った取り扱いが重要です。入れ歯をつけ置きする時間は製品によって異なりますので、事前に取り扱い説明書を確認しましょう。
機械的洗浄によってデンチャープラークが除去できていない場合、化学的洗浄の効果が減少してしまう可能性があります。
使用する洗浄道具
入れ歯の正しい洗い方を実践するためには、適切な洗浄道具を使用することが大切です。入れ歯の洗浄に必要な道具は以下の4つです。
- 義歯ケース(化学的洗浄のための容器)
- 義歯用ブラシ
- 義歯洗浄剤
- 超音波洗浄機
④ 超音波洗浄機は約10,000円からと高価ですので、余裕がある場合にそろえると良いでしょう。①〜③ は入れ歯を清潔に使用するためには必須です。
自宅での入れ歯の洗い方
自宅での入れ歯の洗い方は、日常的なケアとして非常に重要です。毎日正しい洗浄を行うことで、入れ歯の衛生状態を保ち、口腔内の健康を維持することができます。以下に、正しい洗い方や洗浄頻度、注意点について詳しく説明します。
正しい入れ歯の洗い方
筆者がおすすめする入れ歯の洗い方を解説します。一日一回は下記の方法で、入れ歯を洗浄しましょう。義歯洗浄剤へのつけ置きは、一般的に夜に行うことが多いと思います。
入れ歯を外し、食べかすなどの大きな汚れは洗い流します。
泡タイプの義歯洗浄剤と義歯用ブラシを用いて、入れ歯をこすり洗いします。洗った後は流水で洗浄剤や汚れを流します。入れ歯の表面全体を磨くことを忘れないようにしましょう。
錠剤タイプや粉末タイプの義歯洗浄剤を溶かした水に入れ歯を漬けます。入れ歯を漬ける時間は製品によって異なりますが、朝まで洗浄剤に漬けておけば問題ありません。
義歯洗浄剤によって汚れが浮き上がっていますので、仕上げに義歯用ブラシで水洗いをします。汚れと義歯洗浄剤をしっかりと洗い流しましょう。
一日一回の丁寧な義歯洗浄に加え、毎食後の洗浄も大切です。食後は入れ歯を外し、義歯用ブラシと泡タイプの洗浄剤で洗います。その際には、口腔内の天然歯の歯みがきもお忘れなく。
義歯洗浄の頻度
義歯の洗浄は、毎日・毎食後行うことが基本です。一日一回は前述した方法で入れ歯を洗浄しましょう。
少なくとも週に3〜4回は義歯洗浄剤を用いた義歯洗浄を行わないと、入れ歯に付着した細菌数が増加することがわかっています。
洗浄時の注意点
入れ歯の洗浄時には、いくつかの注意点があります。
まず、落下による入れ歯の破損を防ぐために、洗浄時は水の入った容器の上で行うか、タオルなどを下に敷いて洗浄することが推奨されます。
また、義歯用ブラシでの洗い方にも注意が必要です。ブラッシング時に歯磨き粉を使用してしまうと、入れ歯に傷がついてしまいます。泡タイプの洗浄剤を併用することで義歯表面のダメージを減らすことが可能です。
さらに、洗浄後には水ですすぎ、残留した洗浄剤をしっかりと取り除いてください。
入れ歯を長持ちさせるためのコツ
入れ歯を長持ちさせるためには、日々の適切な洗浄と管理が不可欠です。食後のブラッシングを欠かさず、毎日しっかりと汚れを取り除くことが重要です。
機械的洗浄と化学的洗浄を組み合わせることで、入れ歯を清潔に長持ちさせることができます。
歯科医院での義歯洗浄
歯科医院での義歯洗浄は、自宅でのケアとは異なる専門的な洗浄を行うことができます。これにより、着色や歯石などの落としにくい汚れの除去が可能です。
自宅での洗浄と併用することで、義歯の清潔さを維持することができます。
自分で洗浄する場合との違い
歯科医院では、自宅では除去しきれない細かな汚れや細菌を専用の機器と洗浄剤で徹底的にクリーニングします。
一般的には強力な液体タイプの洗浄剤と超音波洗浄機を併用した入れ歯洗浄が行われます。
加えて、普段のセルフケアでは見落としがちな問題点に気づくこともできます。患者さんごとに磨き残しが多い部分は異なります。歯科医師や歯科衛生士が定期的に入れ歯のクリーニングを行うことは、セルフケア技術の向上にもつながります。
また、洗浄の際に入れ歯の状態をチェックし、必要であればフィット感の調整や修理を行うことが可能です。自分での洗浄では見落としがちな点も、専門家の目により確認されるため、より安心感があります。
最適なクリーニング頻度
歯科医院でのクリーニングは、入れ歯の状態の確認と一緒に行われます。
入れ歯の状態の確認は、入れ歯の安定度合いによって頻度が異なります。通常では約3~6か月に一度の確認が必要です。
つまり専門的な入れ歯の洗浄は3~6か月に一回行われると考えられます。しかし、入れ歯に違和感を感じる場合や、顕著な汚れが気になる場合は、早めに歯科医に相談することが重要です。
まとめ
入れ歯の洗い方には、機械的洗浄と化学的洗浄があり、それぞれの特性を理解して正しく行うことが重要です。自宅で日常的にしっかりと洗浄することに加え、定期的に歯科医院での専門的なクリーニングを行うことで、入れ歯を清潔に保ち、健康な口腔環境を維持できます。正しい洗浄法と適切な頻度を守ることを心掛けましょう。