一本分の入れ歯の治療費は治療内容や選択する材料、また保険治療か自費治療かによって大きく異なります。本記事では、一本分の入れ歯の費用について保険治療と自費治療の具体的な値段の違いを解説します。
それぞれの特徴や費用に関するポイントを押さえ、あなたに合った治療法を選ぶ際の参考にしてください。
入れ歯治療の費用に関する基礎知識
そもそも入れ歯治療は、保険治療と自費治療のどちらなのでしょうか?まず知っておきたい「入れ歯治療の費用に関する基礎知識」をお伝えします。
自費治療と保険治療の違いとは?
入れ歯治療には保険治療と自費治療の二種類が存在します。
保険治療では健康保険が適用されるため、費用を大幅に抑えられるのが特徴です。ただし、使える材料や形状に一定の制限があるため、見た目や使用感で違和感を感じる可能性があります。
一方、自費治療では自由に素材やデザインを選ぶことができ、審美性に優れた仕上がりが期待できますが、その分費用は高額になる傾向があります。
一本分の入れ歯に限定すれば、入れ歯の大まかな形態は保険治療と自費治療で変わりません。一番の違いは、保険治療ではメタルクラスプしか使用できず、自費治療ではノンメタルクラスプを選択できるという点です。
クラスプの違いは下記の記事で解説しています。

自費治療を選択する際の注意事項
自費治療を選ぶ際は、そのメリットだけでなくデメリットもよく理解することが大切です。自費治療の一番のデメリットは、費用負担が大きくなることです。また、歯科医院ごとに料金設定が大きく異なるため、事前に充分な説明を受けておくと良いでしょう。
さらに、入れ歯を作製するための諸費用や入れ歯の調整料、修理費用などが別途発生することもありますので、事前に治療費の総額を確認しておくと安心です。

自費治療の費用は歯科医院ごとに独自に設定することができるため、地域性や専門性により治療費に幅が生まれます。
一本分の入れ歯にかかる費用の目安
現役の歯科医師だからこそ分かる、一本分の入れ歯にかかる費用の詳細を解説します。
一本分の入れ歯を作る際の費用内訳
一本分の入れ歯を製作する際の費用は、診察費・材料費・技工費・調整費など複数の要素で構成されています。項目については、下記の表を参考にしてください。
項目 | 内容 | |
---|---|---|
検査費 | エックス線写真 | レントゲン写真の検査 |
口腔模型 | 口腔の模型による検査 | |
作製費 | 前処置 | 前後の歯の形を修正する |
印象採得 | 歯型を取る | |
咬合採得 | かみ合わせの型を取る | |
試適 | 入れ歯を試し入れする | |
装着 | 最終的な入れ歯を装着する | |
材料費 | 義歯床 | 義歯床の費用 |
人工歯 | 人工歯の費用 | |
支台装置 | クラスプなどの費用 | |
その他材料費 | 使用した金属の実費分など | |
調整・修理費 | 調整費 | 入れ歯の調整 |
修理費 | 入れ歯の修理 |
保険治療では、これらの費用は全国一律です。また、保険治療では金属代が別途請求されることはありません。患者さんの自己負担額は決まっており、患者さんの年齢や収入に応じて治療費の0〜3割を窓口で支払います。
自費治療の場合は全額自己負担になり、歯科医院や使用する材料によっては、実費の材料費を請求されることがあります。
保険治療の場合の値段
一本分の入れ歯の治療費を保険適用内で行う場合、負担額は4千円から1万円程度が一般的です。一本分の入れ歯に限れば治療は複雑ではありませんので、歯科医院による価格差は少ないと考えられます。
3割負担の場合の一般的な金額を下記に示します(令和7年1月時点)。これらに加えて、初診料や再診料などが加算されます。
- エックス線写真
-
140円〜1,210円
- 前処置
-
120円
- 印象採得
-
690円
- 咬合採得
-
170円
- 試適
-
120円
- 装着
-
180円
- 義歯床
-
1,970円〜2,180円
- 人工歯
-
40円〜280円
- 支台装置
-
420円〜5,360円
- 調整費
-
310円
- 修理費
-
480円〜870円
一般的な一本分の入れ歯を作る際の、筆者が考える最低限の流れと費用を以下に示します。STEPが来院日とリンクしています。
1,210円
980円
3,700円
310円/月
870円



4千円から1万円程度というと高価と感じるかもしれませんが、一般的には保険治療で行う入れ歯治療は、歯科医院にとって赤字部門と考えられていることが少なくありません。
自費治療の場合の値段
自費治療で一本分の入れ歯を作る場合、その費用は数万円から数十万円に及ぶ可能性があります。歯科医院の専門性や地域性、入れ歯の素材などによって、価格はさまざまです。
自費治療では、各項目ごとに費用が決まっていることもありますが、総治療費のみが設定されていることもあります。総治療費に含まれない費用がないか、事前に確認してから治療を受けましょう。
入れ歯は一度作ってしまうと、大きな修正は難しいこともあります。値段だけでは選ばず、入れ歯治療に専門的な知識がある歯科医院で治療を受けることをおすすめします。
入れ歯の費用を抑えるための工夫


入れ歯の費用を抑えるための工夫をお伝えします。しかし、入れ歯は口腔内で毎日使用するものですので、値段だけで治療法を選択しないほうが良いかもしれません。
保険治療で治療費を抑える
保険治療の範囲内であっても、一本分の入れ歯であれば十分な場合も多いと筆者は考えます。
一本分の入れ歯における保険治療のデメリットは、審美性に配慮できない点です。見た目を気にしない場合は、保険治療も選択肢になるでしょう。
分割払の活用
高額な自費治療費を支払うことに不安を感じた場合、分割払いを利用することで負担を軽減することができます。
多くの歯科医院ではクレジットカードや医療ローンなどの分割払いに対応しており、月々の負担を抑えやすくなっています。ただし、分割払いの場合は利息が発生することがあるため、事前に詳しい条件を確認し、自分に合った支払い方法を選びましょう。
医療費控除


高額な医療費を支払った場合、医療費控除を申請できることがあります。医療費控除を活用することで、課税所得を減らすことができ、結果として支払う税金が減少します。
入れ歯治療では、保険治療でも自費治療でも医療費控除の対象となります。